雪の狼 [Book]
雪の狼:グレン・ミード著
グレン・ミードの著作を読んだのは初めてである。
10年前に文庫で出版されたらしいが、書店に積まれていたのが目について購入。
物語はスターリン時代のロシア(ソビエトと言ったほうがいいかな)に、スターリン暗殺を目論んで
侵入した工作員たちの話である。
話は、父親の死に疑問をもった現代のジャーナリストが、その死をCIAに対して明らかに
しようということから始まる。よって結論は最初から分かっている話ではあるが、
いやはや、吸い込まれるように一気に読み進んでしまった。
が、ふと冷静に考えると、この物語、主人公が途中で入れ替わるのである。
入れ替わるというか、そのように誘導されるのであるけれども、
うーん、これは余計な手法のようにも感じた。
話の中で、KGBの局員達は、スターリンが育てた孤児達がたくさんいるという一説が出てくるが、
東西の壁が崩壊した時に、ルーマニアのチャウシスクが同じような事をしていたことから、
あながち事実なのであろうかと考えてみたりもした。
独裁者の考えることは、常人には及びもつきませんな。
スターリンの時代なので、当然私もその時代背景を知る由もなく、彼が何百万、
何千万の人民を虐殺したことが事実だとしても、ピンとこないのであるが、
当時の社会的背景を考えれば、ありえた話かもしれない。
スターリンの事については、その所業はヒトラーに匹敵する悪人だと思われるが、
以外と日本ではあまり紹介されない。これはなにゆえなのか?
すこし勘ぐりたくなる気持ちにもなった。
正直なところ、この本は面白い。書籍の世界はほんとに大海のように広いが、
面白い本を書く作家に出会う事もまた楽しみの一つだろうか。
著者はフォーサイスと比較されるらしいが、個人的には、フォーサイスの『オデッサ・ファイル』を
最初に読んだ時の衝撃までは感じられなかった。
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